全国戦没者追悼式のこと①
いったん会費も納入したのだが、申し込むのが少し遅かったことが一つ。もう一つは、父が遺族会に名を連ねていないこともあったと思う。
政府主催の全国戦没者追悼式は、各都道府県単位で参加するが、その遺族会会長からご連絡をいただいた。
「せっかく申し込んでいただきながら、大変申し訳なく思いますが、今年は枠がいっぱいなので、今年は見送ってもらえないでしょうか。その代わり、来年は、最優先であなたに行っていただきますから。」
やむなく、翌年に延期となってしまったが、結果的には幸いであった。上皇陛下が退位されることとなり、平成天皇、美智子皇后両陛下がご出席になる、最後の全国戦没者追悼式となったからである。お二人は、先の大戦で、多くの人命が失われたことに、深い哀悼の意を捧げて来られ、激戦地となった南洋の島も慰霊されておいでになる。
食道がんが肝臓、肺に転移した状態で余命1ヶ月を宣告され、緩和ケアのみ行っている入院中の母親に、そのころは意識の混濁も見られたので、自分が東京に行っている間、何とか命を永らえてほしいと心の中で念じた。親不孝ばかりしてきた息子の最後の願いを聞きとげてくれた母は、戻った後、1週間ほど苦しい中をがんばってくれ、そして旅立った。
こうして、昭和20年5月、フィリピンで戦死した祖父の追悼式に、初めて参加することになったのである。