僥倖
昨日行われた対局に勝ち、将棋の藤井七段が「棋聖」のタイトルを取った。最年少のタイトル獲得。快挙である。
中学生棋士としてプロになって、わずかな期間で一つの頂点を極めた。将棋ファンの一人として、とてもうれしい。
とかく暗い話題の多い昨今、明るい話題をもたらせたことも称賛に値するのではないだろうか。
僥倖。「ぎょうこう」と読める人はそう多くないのではないか。意味を知る人は、さらに数が少なくなると思われる。
「思いもよらず舞い込んだ幸福」という意味を知り、それを会話や文章の中で適切に使いこなせる人は、いっそう数少なくなることはまちがいない。
確か、藤井棋聖が中学生棋士として取材に応じた時のコメントに、この言葉を使った。驚いたのである。
藤井棋聖が天才であることは、誰しもが認めることであろう。もちろん異論はない。
さらに、相当な読書家であることもまちがいない。生半可な読書量では、コメントに、嫌味や違和感を抱かせることなく、「僥倖」という語を使うことはできまい。
最年少タイトルホルダーとなったのも、決して僥倖ではなく、才能、素質に恵まれた上に、努力、精進の賜物であることもまた、疑いようのないことであると確信している。