香り

通勤の道すがら、どこからともなく金木犀の香りが漂ってきた。強い香りだけに、秋風に運ばれてきたものが鼻孔をついたものと思われた。花木は、見とめられなかったのである。この香りが秋の到来を感じさせてくれる。

朝、寒さで目覚めた。窓が少しだけ開いていた。朝夕の寒さも確かに秋を感じさせはする。が、何よりも、香りによってその存在を強烈に主張するかのような金木犀に、季節の移ろいを感じるのである。

しばらくの間、この香りが行き帰りのささやかな楽しみとなってくれることがうれしい。

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