都鄙問答

「鄙びた温泉宿」を「ひなびた温泉宿」と読める方は、そこそこはいるだろうが、「都鄙」を「とひ」と読める方は、たぶんそう多くないと思う。

緊急事態宣言が出されている折のステイホーム期間に、亀岡出身で、石門心学の祖、石田梅岩の著作「都鄙問答」を初めて読んだ。現代語訳の本の帯には「~分で読める。極限までわかりやすさを追求」とかいう文言が躍っていた。「都」は私塾を開いた京都の市内、「鄙」は生まれ故郷、亀岡を指す。

職業柄、文章を読むのは一般の方よりは速いほうだとは思うが、本の帯にあるような~分では、とても読めない。字面を追うだけならもちろん可能だ。ただ、その内容、思想を味読、精読するとき、キャッチコピーにあるような時間では、本来の意味での読書にはなるまい。

まず、儒教の知識がないとかなり手こずる。仏教や道教、神道に関する最低限の知識も必要だ。江戸時代の庶民の暮らしぶりや社会制度といったものも背景に色濃く表れている。それらの知識がない状態では、とても、短時間で読了できる簡便な書物ではないのである。

読み終えるのに何時間も要したが、新鮮に感じたのは、落語の演目に出てくる若旦那や番頭、丁稚(でっち)の会話は、江戸時代の商家におけるごく一般的な会話だったのだということであった。

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